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CENTER:''&color(#ffdab9){アグリア〜運命の女性達〜};''

CENTER:風の章 闇の皇女 エルミア・フィンリー

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#navi(fate)
**風の章 エルミア・フィンリー <聖霊戦士> [#m09eb561]

RIGHT:''&color(#ffdab9,#000){著者:真悠};''
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 訪問者は、何と&ruby(ふうれいしちょう){風霊士長};と&ruby(かれいしちょう){火霊士長};だった。
驚くエルミア。眠気など吹っ飛んでしまった。マーリアを起こすエルミア。
マーリアは、何が起きたのか理解してないようで、眠い目をごしごしと擦っている。
風霊士長と火霊士長は、2人が起きたのを確認すると&ruby(ことづて){言伝};をする。

#br
「マーリア・エリス。エルミア・フィンリー。&ruby(せいれいおう){聖霊王様};がお呼びだよ。大切な話があるそうだから、霊士宮の広間に行くように。いいね?」
「マーリア・エリス。エルミア・フィンリー。&ruby(せいれいおう){聖霊王};様がお呼びだよ。大切な話があるそうだから、霊士宮の広間に行くように。いいね?」

 聖霊王が、あたし達に話がある? どう言う事?
……ううん、そんな事より何でこの2人がそれを伝えに来るの?
普通、女官で事足りるんじゃないの? 昨日の事が原因?
……だったら、呼び出しを受けるのは、あたしだけのはずなのに……。

 マーリアはエルミアにくっついて、心配そうな顔をしている。

「……霊士宮の広間で良いのね?」

 エルミアが2人の霊士長に尋ねる。

「そうだよ。すぐに行けるかい?」

 風霊士長の言葉にエルミアが頷く。2人の霊士長は、エルミアの返事に頷き、笑顔を見せて戻っていく。

 不安そうな顔をしているマーリア。

「エレア……わたし達怒られるのかなぁ?」
「大丈夫よ。マーリは何もしてないんだから。とにかく行ってみよう。霊士長を使って、わざわざ言伝に来るんだもん。聖霊王が呼んでいるのは確かでしょ?」

 エルミアの言葉に不安そうな顔をしながらも頷くマーリア。2人は広間に向かっていった。

 ふ…と前方に戦士長が、広間の扉の前に立っている。エルミアとマーリアの姿を見つけると笑顔を向け2人に手招きする。

 何故、霊士宮に戦士長が来ているの?
 変だわ。

「エルミア、マーリアこっちだよ。」

 戦士長は人なつこい笑顔で、2人に声をかける。思わず警戒するエルミア。

「聖霊王に呼ばれたんだろう? 此処で良いんだよ。彼もすぐに此処に来るだろう。」

 戦士長はそう言うと、広間に通じる扉を開け、2人を招き入れる。

「……あたし達は、聖霊王に呼ばれたのよ。何故、戦士長の貴方が此処に居るの?」

 エルミアの言葉に、優しく微笑む戦士長。

「それは後から判るよ。今はそこで聖霊王を待っていなさい。」

 戦士長の言葉に、フイと横を向くエルミア。座るよう促され、豪華なソファーに座るエルミアとマーリア。

 あまりの豪華さにマーリアが小さくなって、身体をカタカタと震わせている。
戦士長は、無言で広間の中をウロウロ歩いている。エルミアは、その様子を冷ややかに見つめている。

 絶対に変よね。
 ……そう言えば、今日に限って霊士達の姿が見えなかった。
 ……こんな事って、前にもなかったかしら?
 霊士達じゃなく、シャーラトの人々の姿が見えなかった時があった。
 あれは、あたしがラ・リューラと会うときだったはず。
 ……? あれ? そうよ。あれってどう言う事だったのかしら?

 ふとわいてきた疑問。戦士長に尋ねようとしたとき、扉が開かれた。
エルミアとマーリアの視線が扉に向けられる。
しかし、そこには聖霊王ではなく、アスティアと女戦士長カーラ・マルズヴァーンの姿があった。

 ますます不思議そうな顔をするエルミア。

 アスティアは、マーリアの隣に座って、顔を真っ青にしている。戦士長が、女戦士長に言葉をかける。

「ご苦労様でした。カーラ様。」

 女戦士長が微笑む。

「……これがわたしの最後の仕事だからね。…ラステート、彼女がサーフィアの…?」

 椅子に座ってしっかりと前を向いているエルミアを見つめながら、ラステートに尋ねるカーラ。ラステートが無言でコクリと頷く。

「……そう……。」

 一言ポツンと呟くと目を細め懐かしそうな顔でエルミアの姿を見つめるカーラ。

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 その眼差しをエルミアは知らなかった。いや…気が付かなかったのだ。
アスティアまでが、聖霊王に呼び出されている。
と、言う事は、昨夜の出来事しか思いつかない。

 でもどうして?
怒られるだけなら、わざわざこんな広間に来なくたって良いはずなのに。

 エルミアは、同じソファーに座っているマーリアとアスティアの顔を見つめた。
2人とも不安の色を隠しきれない。
おそらく、平気な顔をしているのは、エルミアだけであろう。

 暫くすると、広間につながる廊下の方から、コツーンコツーンという足音が聞こえてきた。その音を合図に、戦士長と女戦士長が、扉の両脇に立つ。
ゆっくりと厳かに扉が開かれると、大神官の顔が見える。その後ろには聖霊王が控えている。

 何で大神官まで来るの!?
 嫌な雰囲気ね、まるで裁判でもするみたいじゃないの!

 エルミアが顔をしかめる。ますます真っ青になるアスティアとマーリア。
大神官は、広間に入り、一つ咳払いをすると、ゆっくりと広間の壇上の上に立つ。
そして、勿体ぶるかのように声を出す。

「……アスティア・カーナ……。こちらに来なさい。」

 大神官の言葉にアスティアは、身体を硬直して、いきなり哀願しだした。

「だ、大神官様! 申し訳ありません! もう暴れませんから追放だけはお許しを!」

 アスティアの言葉に、大神官の威厳に満ちた顔が一瞬崩れる。聖霊王が、大神官の横で、声を殺して笑っている。戦士長と女戦士長も同様である。
だが、アスティアはそんな事に構っていないかのように必死で謝っている。
ついに戦士長が笑い声を上げた。

「ア、アスティア、君は本当にあのリグットと、セティーラの娘だな。」

 戦士長の言葉に思わず笑いが込み上げてきたエルミア。

 短い言葉だが、それだけで彼女の両親のことを説明しているようである。女戦士長のカーラに肘でこずかれて、笑いを収めるラステート。大神官が気を取り直したように再びアスティアを呼ぶ。

 アスティアの顔が引きつる。しかし、大神官の言葉は、アスティアの意に反して続けられる。

「アスティア・カーナよ。ラ・リューラ様の御名のもと、そなたに聖霊戦士の称号を授ける。」

 大神官の言葉に、アスティアが、大きく眼を見開いていた。大神官は、アスティアを呼び寄せると自分の持っていた&ruby(しゃくじょう){錫杖};をアスティアの肩に置く。

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 聖霊戦士――とは、シャーラトの中で最も優れた霊士であり戦士である者の称号。
だが、その称号も今ではあり得ないと噂されるほど、難しい称号である。
そして、あり得ないと噂されるもう一つの理由は、聖霊戦士が誰なのかと言うことが、判らないためでもある。
勿論、ラ・リューラを始め、大神官、聖霊王、そして戦士長、女戦士長が、秘密にしている事。従って、聖霊戦士に任命された本人とその5人しか知らない称号なのだ。

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 聖霊戦士? 何故急に?
確かに昨夜マーリアが冗談で言っていたけど、本気にしてなかったのに……。
もしかして、霊士達の姿がなかったのはこのためなの?

 考え事をしているエルミアの耳に大神官の言葉が聞こえる。

「明日からは、地霊士として、また戦士として訓練にいそしむように。」

 アスティアは、呼ばれて行った時とは一変して夢見心地のような顔で戻ってくる。

「次に、マーリア・エリス。こちらに来なさい。」

 マーリアは、大神官に名前を呼ばれ、身体を硬直させた。カタカタ身体を震わせ、不安そうな顔でエルミアを見つめる。
エルミアは、小さく微笑むと、軽くマーリアの背中を押してやった。
マーリアも勇気付けられたのか、笑顔をエルミアに見せ、大神官のもとにおずおずと歩み寄る。

「マーリア・エリス。そなたに聖霊戦士の称号を与える。明日からは、火霊士として、また戦士として訓練に励みなさい。」

 大神官はそう言うと、マーリアの肩に錫杖を置いて呪文を詠唱する。

 聖霊戦士の称号を与えられたマーリアは、満面の笑顔で戻ってくる。マーリアがソファーに再び座り直したとき、アスティアとマーリアの瞳がエルミアに注がれる。
まるで次は、エルミアだと言わんばかりに……。
だが、エルミアは、そんな事気にしていなかった。
おそらく、自分が聖霊戦士というシャーラトきっての最高の称号を簡単に与えられるわけではないと判っていた。

 案の定、大神官は、マーリアに聖霊戦士の称号を与えた後、いそいそと扉の方に向かう。その大神官を止めたのが、戦士長と女戦士長であった。
戦士長は、扉の前に立ち、大神官に告げる。

「大神官様、どうなされました? リューラ様からの&ruby(ちょくめい){勅命};が、今一つ残っているはずですが?」

 冷ややかな視線で、大神官を促すラステート。

「……もう用は済んだ。そこをどくが良い、戦士長。」

 出来るだけ威厳を保ちながら、答える大神官。

「これは、異な事を申される。ラ・リューラ様の勅命に辺り、大神殿で行えないと仰ったのは、大神官様、貴方様ではありませんか?
……ですから聖霊王のご好意で、こちらの広間をお借りしたはずです。」

 大神官の言葉に、ニッコリと微笑みながら、話し出すカーラ。カーラの言葉に、大神官の顔が引きつる。エルミアの横では、アスティアが今にも大神官に噛みつきそうな顔をしているし、マーリアも怒っているような感じである。

 大神官は、ちらりとエルミアの顔を見るが、すぐに目を反らす。大神官の煮え切らない態度に、壇上から降りてきた聖霊王が口を開く。

「……いくら、ご高齢とはいえ、ラ・リューラ様の勅命すら覚えていらっしゃらないようでは、大神官の地位も危ういものですぞ。
……さあ、どうぞ思い出して下さい。何でしたら恐れ多くもこの私が、大神官様の代わりに言って差し上げましょうか?」

 思い切り皮肉を込めた聖霊王の言葉。

 高齢と聖霊王は言っていたが、この大神官はまだ50歳代である。その皮肉を察知したのか大神官は、あさっての方向を向いて声を出した。

「エ……エルミア・フィンリー! 聖霊戦士となるように!」

 そう言うと扉の前にいた戦士長を押しのけ、広間から出て行く大神官。戦士長と女戦士長は、大神官の態度に不快な表情を見せる。
聖霊王も僅かに眉が引きつっている。
アスティアとマーリアに至っても、今にも怒鳴りそうであった。

 エルミアは、ふ……と自嘲気味な笑みを浮かべながら呆れたように言う。

「……くれるって言うものは、貰っておくわ。でも後で返せって言ったって、知らないからね。それで? あたしは何をすればいいの?」

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