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12.春待月

「旧暦で12月は、師走というんだけどね、なんか師走って言ったら、凄くせわしないでしょう? 他の読み方では、春待月っていうんだって。その方が優しい感じがするよね。」

 私の言葉に母が笑っている。

「昔の呼び方でしょう? 元々1月の元旦が、迎春と言うぐらいだからね。昔々は1月は春だったんじゃない? だからその前の12月が、“春待月”って言われたんじゃないの。」
「あぁ、そうかもしれないね。ちょっと不思議に思っていたんだけど、それなら春待月って言う呼び名も納得も行くなぁ。」
「納得行くのは良いけれど、大掃除手伝ってよ。春を迎えるのに余りに汚かったら、うちだけ春が来ないかもしれないんだから。」

 思わず母の言葉にうっと息を詰まらせる。

「…んー、大掃除をする所あたりが、やっぱり師走なのかなぁ。」

 ちょっとだけ不貞腐れた私の声に、母が再び笑い声を上げる。

「どっちだって、する事は同じでしょう。さあさ、掃除開始するよ。その後おせち料理も作らないといけないんだから。一杯手伝ってもらわないと、今年中に終わらないよ。」

 母の言葉に私も掃除の手伝いをする。めまぐるしく動く中で、家がだんだんと綺麗になっていく。あらかた掃除が終わると、母はおせち料理に取り掛かっていた。コトコトと料理の香りが立ち昇り始める。
そんな風景が、毎年当たり前のように行われている。忙しいけれど、来年はどうなるんだろう。そんなそわそわ感も拭えないこの時期。来年もいい年であって欲しいな。
もしかして、昔の人もそう思って“春待月”なんていう洒落た月の名前をつけたのかもしれない。期待と不安とが一緒になるこの時期。

 掃除が終わった後に、窓から外を見るとふわりふわりと雪が舞い散っていた。道理で、寒いと思ったら雪が降り始めている。積もる雪の降り方ではない。でも暫くしたら、一面銀世界になっていくんだろうなぁ。
雪があるけれど新春を迎える。新しい春。本当の春には、まだまだ遠く及ばないけれど、それでも楽しみであり、不安でもある。どうか、来年もいい年でありますように。
思わずそう願いたくなってしまう。12月が春待月と知った今日だからなのかもしれない。

 春を待つ月…か。師走よりやっぱり呼び方が綺麗だよね。今度からこっそりとそう呼んでみようかな。そうすれば、いつも嫌だった12月も少しは好きになれるかもしれないな。

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