Novel
Legend of origin 〜創世神話〜


第1部 誕生 <創世の娘 セレス・ファーラ>

著者:真悠
722

 暗いけれど、穏やかな空間。信じられないほど心が安まる。時々、美しい光と闇が交差していく。永遠とも思える刻。それだけで充分だった。

 それが何かに呼ばれ、不意にその世界から切り離された。
……何が…起きた? 俺を呼んでいるのは何なんだ?
激しいほど眩しい光が俺を包む。苦痛はない。だがこの不快感は何なんだ?

 ふと顔を上げると、俺が2人居る。どう言う事だ? じゃぁ、この俺は一体誰なんだ?
2人の俺も同じ事を思っているのか、不可解な顔をしている。

――行くが良い。新たな命へと――

 頭の中に響く声。それに気を取られた瞬間、高速の早さでどこかに引っ張られる。

    永遠の安息を得たはずなのに、
    再び俺を引き戻すって言うのか!?
    誰が、そんな事を認める!
    何故、よりにもよってこの俺が必要なんだ!
    これ以上、俺の邪魔をするな!
    俺を揺り起こすな!

 抗ってみたものの、何かは俺の言葉など聞いていないかのように俺をどこかへ送り出す。数多(あまた)の光と闇が爆発する。また……意識がなくなる。
ようやく安息を得たはずなのに……。今度こそ誰にも邪魔されなかったはずなのに……。
そう約定(やくじょう)を交わしたはずなのに……。

 約定――? 誰と……交わした?
俺は…誰だ……? 目の前に眩いばかりの蒼い光が見える。
何て美しいんだ? その蒼い光を見つめた瞬間――俺の意識は、深い処に落ちていった。

 気が付いたとき、激しい光の渦の中に俺はいた。眩しい……。
それに身体にまとわりつく重い物は何なんだ? 光が屈折している。
これは……泡? 此処は水の中? なんで俺がこんな所に居るんだ?

 ――何より、俺は一体誰だっけ?
考え事をしていると、いきなり俺の身体が持ち上げられた。

「うわっ!?」

 驚く間もなく、身体が持ち上げられ、違う空間に放り出された。水の圧力が、俺を押しつぶそうとしていた。
だがそれも一瞬のことだった。放り出された先には、大地があった。
何が起きたか理解できぬまま、呆然となっていた。

 光り輝く周囲。信じられないものが目の前に映し出される。
なんて……綺麗な所なんだ? こんな光景見た事ない。
気に満ち満ちた清々しい大地。清浄なる豊かな水。光を放っている空。

 一体此処は何処だ? 俺は……本当に何者なんだ?
この世界に来る前に、どこかにいたような気がするんだが……。
どう考えても思い出せない。……此処には誰もいないのか?
辺りを見回す俺の耳に不快な声が聞こえた。

「……お前は一体誰だ!」

 振り返った俺の目には、一人の人間が映し出される。
そいつを見たとき、意味不明な不快感が込み上がって来た。何処かで知っているような……。
こいつは一体誰なんだ?

「……偉そうな奴だな。貴様こそ、一体誰だよ!」

 俺の言葉にそいつが口ごもる。
はん! こいつも自分の事が判っていないと見える。

「ふーん……。お前等も自分が誰なのか判ってないのか?」

 俺と目の前にいる奴の他にもう一人の声が聞こえた。お互いにその声のする方を振り返った。俺達3人は、互いの顔を見合った。
……変だな……。本当にこいつ等、何処かで見た事がある。
懐かしいような、不愉快なような……? 一体俺達は何なんだ?

創世(そうせい)に生まれし我が息子達よ。》

 俺達3人の硬直の中、不意に頭に響く声が聞こえてきた。その声の主を捜して、互いに辺りを見回す。

「あ、あそこ!」

 一人が、空を指さす。そこには、一人の男の姿。……誰だ? こいつ?
それに俺達の事を息子だと言っていたが……。その男は、俺達3人をジッと見ていた。

《我は、そなた達の父親カオス。そしてこの大地は、そなた達の母親アース。
創世に生まれし、そなた達に役割を与えよう。》

 おい! なんつー勝手な奴なんだよ! それよりも何よりも俺達が誰なのか教えろよ!
俺等3人の意思など無視し、父親と言った男はそれぞれ俺等に光を投げよこす。
反射的にその光を受け取った俺達。

《……そなた達の名前もその“守り”に託してある。そして、そなた達の過酷な試練もな。
……それはそなた達が成長するに伴って、その守りも強大になるであろう。
この新たな世界を守るが良い。》

 父親と言ったカオスは、言いたい事だけ言うとスゥッと消えていった。
ちょっと待てぇ!
何なんだよ! その態度は!

 不機嫌になった俺達3人。不意に父親から受け取った光が俺達に反応し、激しいほどの爆発を起こす。

「うわっ!」
「な、何なんだ!?」
「これは―――!!」

 その光の中には、本当にありとあらゆるものがあった。
俺達の名前だけではなく、理の全て、そして守らなければならない存在。
そして俺達を待ち受けて居るであろう、過酷な試練……。

  ああ――またか。
  また俺は、厄介事に首を突っ込まなければならないのか。
  安息は願っても得られないのか……。

 不意に俺の意識がもう一人の俺と重なり合う。
……安息が得られない? 一体それは何なんだ?
俺の意識が深く深く眠り込む。

《……創世に生まれし愛しい子供達よ。聞こえますか?》

 あれ? 今のは誰の声だ?
優しい女性の声。父カオスであるわけがない。では誰だ?

 俺達3人は、眩い光の中で、一人の女性を見つけた。
美しく豊かな長い黒髪を靡かせ、煌めくような蒼い瞳の女性。あの蒼色は、俺が一番最初に目にした蒼だ。
誰……だ?

 その女性は優しい微笑みを浮かべると、俺達に手をさしのべた。

《わたくしは、貴方達の母親アースです。……これから、貴方達にとって、どんな過酷な試練があったとしても、どうかわたくし達が、貴方達を見守っていることを忘れないで。その試練も必ずしも受け入れなくて良いのだと言う事を覚えて置いてください。》

 懐かしいような瞳。優しく温かなぬくもり。
ああ……そう言えば俺はあの水の中で、あの温もりに包まれていたんだ。
母親……? 俺達の? 心地好い声だ。

《そう、貴方達は皆わたくしとカオスの子供達です。ですけれど、他人でもあるのですよ。
お父様であるカオスが、貴方達に託した“守り”を大切にして下さいね。
それは人を守るだけでなく、貴方達をも守るもの。
でも願わくば、その守りを使わずに過ごせることを祈っています。
そして……どれほど辛くても、貴方達は決して一人ではないのだと、心して下さいね。》

 そう言うと、母アースは、美しい微笑みを浮かべ、陽炎(かげろう)のように消え去っていった。
まるで夢でも見ているみたいだな。この世界と言い、俺達の存在と言い……。
……って、他の世界を知っているようだな? この世界しか知らないはずなのに……?

 俺達の手に残ったのは、それぞれの剣。手に吸い付く様なほどに馴染んでいる。
まるで遥か昔から自分のものだったかのように。その剣は、まるで意思があるかの如く、俺達の体の中に消えていった。
『必要な時に力になる』と言い残して……。

「……所で、この剣から教えられたことだが……。どうやらお前達は創世始めの兄弟って事になるんだが……。どっちが上なんだ?」

 金色の髪をしている奴が、興味深げに俺ともう一人を見ている。俺と黒髪の奴は、互いの顔を見合わせた。
こいつ……よくよく見れば、あの父カオスに似て居るんじゃねぇか? 何だか胸糞悪いな。

「兄弟だなんて認めるものか。まあ、どうしてもって言うんなら、この俺が兄になっても良いが……?」
「はん! んな事誰が認めるかよ!」
「……フーン…じゃぁ、どっちが兄で、どっちが弟になるかまだ決まっていないんだよなぁ。どうだ? それぞれ強い方に従うってのは。」
「……へぇ……そりゃ面白いな。」
「……吠え面かかせてやるぜ?」

 俺達は互いにパキパキと指を鳴らした。こんな奴と兄弟だと?
誰が認めるかよ! 俺と黒髪の取っ組み合いが始まった。


 深く、美しい森の中をひたすら走っていく一人の少女。
母アースの小刻みな振動が終わった後、美しい光の柱がそびえ立った。聖霊達は、新しい命の誕生だと言って、彼女から離れていく。

 その光の柱の中には、自分と同じ様な仲間がいるはず。光を目指して走っているのだが、なかなか辿り着かない。
激しい呼吸を一時整えるために、彼女は立ち止まった。

  ああ!! 何てもどかしいのかしら。
  どうせなら、この空を飛べればいいのに!
  そうすれば、もっと早く聖霊達と一緒にあの光の元に行けるのに!

【……我等の愛しい創世の娘よ。ならば、そう願うが良い。我等はそれに応えるよ。】

 不意にエリュクスの耳に、聖霊達の声が響く。

「え? ……あの光の元に行きたいって言えばいいの?」

 そう言った瞬間、私の身体がフワリと浮いたかと思うと、天高く舞い上がった。

「な、何!?」
【驚くことはない。これは我の加護だ。】

 風の聖霊カザマの声が響く。そうして、ものすごい早さで、光の柱の上がった場所に向かってくれる。
うわぁ……。なんて綺麗なの?
大地に立っていても綺麗だと思ったけれど、空から見るこの世界はもっと綺麗。

 せっかくこの美しい世界に見とれていたのに争っているような耳障りな声が響く。
何なの? 聞くに耐えないじゃない!

【降りるよ。創世の娘。】

 カザマがクスクス笑いながら、私を大地に降り立たせる。目の前には、紫に切り立った美しい崖と、言葉では言い表せない美しい海の色。
蒼く碧で深く、そして澄み切っている。
海と大地の境目には、滝が流れていて、幾重もの虹が光り輝いている。
私の生まれた大地もとても美しかったけれど、此処もまたなんて綺麗な処なの?

 お父様やお母様が創り上げた美しさの傑作。しばし、我を忘れて見惚れていたわ。
それなのにその陶酔を邪魔する耳障りな声。
一体誰なの!? この美しさの中で、争っているのは!

「誰なのよ! この世界で争っているのは!」

 何故か怒りが込み上げてきた。これって……私には初めての感情だったのに全然戸惑わなかった。
茂みを両手で掻き分け、声のする方向に行ってみたの。

 そこには、何故か言い争っている2人の男の子。私と同じくらい……?
一人は、黒のような紫のような長い髪の男の子と、もう一人は、紺色のウェーブの掛かった髪に、お父様と同じ様な角がある。
あら♪ よく見れば2人とも素敵な男の子じゃない?

 ……でもどうして喧嘩なんかしているの?
よく見ると、2人とも頭にコブを作っている。わ〜……痛そうと言うか、みっともないと言うか、凄まじいとでも言うのか…。
声を掛けるのすら忘れて、私は、ジッと2人の様子を見ていたの。
それに気が付いたのか、2人の男の子は同時に私を振り返ったわ。
すごく勘がいいのね。

「誰だ!! 貴様は!!」

 ……は? 今なんて言ったの? 私の事貴様ですって?
何て事を言うのよ! 私は『貴様』なんて言う名前じゃないわよ!
反論しようとした時、2人は私を無視して、再び喧嘩をし出した。
な、何なの、この2人は〜〜〜〜〜〜!!

「俺の真似をするなっ!!」
「何を言ってやがるっ! てめぇの方こそ俺の真似をするんじゃねぇ!」

 ああ! もう聞くに耐えない騒音!

「貴方達、いい加減にしなさいよっ!! お父様やお母様達が創って下さったこの美しい世界を破壊する気なの!?」

 私の声が、谷中に響き渡る。聖霊達がクスクス笑っている。
こんな声って、出そうと思えば出るものなのね。私もこの2人のこと言えないかなぁ?
2人の男の子は、私の声に耳を塞いでいる。
なーんて失礼な奴等なの!?
……まあ、正直言うと、私も驚いたけれど……。

 気、気を取り直しましょう。私は、ニッコリと微笑んで、2人に話しかけたの。

「初めまして。私は、ラー・エリュクス・セレス・ファーラよ。貴方達は? そして、どうして喧嘩していたの?」

 けれど、この2人、私の問い掛けにそっぽを向いて、答えようとしないの。
何だかその横柄な態度にカチンと来た私。
人が穏便に聞いているのに、その態度は頂けないんじゃないかしら?
この2人を何とか素直にさせる方法はないかしら?
そう思った私の両手にクリスタルが現れた。
そのクリスタルを見て、顔色を変える2人。

 あれ? これってもしかして、彼等が苦手とするものなのかしら?
確か聖霊達やお父様、お母様に教えて貰った時にそんな事を言ってたような。
黒のような紫のような長い髪の男の子が、渋々口を開く。

「……俺は、ロドリグス・フォン・セデグル・ルーグアラノ。だがな、俺とこいつの事は、女には関係ない事だ!」

 可愛くない〜〜〜〜〜! 何よ、この高飛車な男は! もう一人の紺色の髪に角を持つ男の子は?

「……俺は、セイクリッド・ル・ロードリー・フォン・ヒルグラ。お前に話すことなんかねぇよ!」

 なーんて、腹の立つ男なの!?
随分しゃくに障ること言ってくれるじゃない! 2人とも見てくれは、お父様に負けないほどのいい男なのになんなの? この態度は!
礼儀ってものを知らないのかしら!?
そう思った瞬間、私は両手に現れたクリスタルをそれぞれのコブめがけて叩き付けてやったの。

 ロドリグスもセイクリッドも暫く、痙攣を起こして倒れていたけれど知るもんですか。
人を侮辱した罰よ!

   ――これが、私達の初めての出会い――
   第一印象は最悪だったわねぇ。
   聖霊達も絶句していたけれど、当たり前の事じゃない?

 暫くして、2人とも起きあがったけれど、情けないわねぇ。この2人。
女の私に適わないなんて……。

「き……きっさまぁ〜! 女のくせになんつー乱暴な事しやがんだ!」

 セイクリッドがそう言うけれど、じゃぁ、あんたは男のくせになんだって言うのよ。
セイクリッドもロドリグスも怒りで、身体が震えている。

「あらぁ? 男のくせにか弱い私に暴力を振るおうとでも言うの?」

 私の言葉に、2人とも顔を赤くしている。ウフフー♪ この2人面白い。
顔を赤くしたり青くしたり、感情の起伏が激しいのね。
……うん、何だかこの2人気に入っちゃった。

「ねぇ、話を戻すけれど、貴方達何を巡って争っていたの?」

 それを聞くと、ま〜た2人ともそっぽを向いてしまったの。
……あっそう。そうゆう態度に出る訳ね。そんなに怪我をしたいのかしら?
私の考えていた事が判ったかのように、2人は慌てていたわ。

「……俺達2人は、兄弟として生まれてきたんだが、どっちが上になるか父上も母上も決めてくれてなかったんで、自分達で決めて居るんだよ。」

 ロドリグスは、土埃を払いながら、ぶっきらぼうにそう答えてくれた。
本っ当に可愛くない男ね。それに偉く高飛車じゃない?

「それで、どっちが上か決まったの?」
「決まってないから、穏便に決めようとしてんだろうが。それをお前が横から茶々入れやがったんだろうが!」

 ……このセイクリッドって、ホントーにお母様が産み落とした子供なの?
何だかメチャクチャ言葉が汚くない? 大体、こんな争いをしていて、何処が穏便なのよ、何処が!
無茶苦茶な喧嘩をして、お父様達やお母様が創って、私達に与えて下さったこの大地を破壊しかねなかったじゃない!
……でも、このままだと、ホントーにこの大地を破壊するかも知れないわ。

「でも、どうせ貴方達が決めるって言ったって、決着が付かないんじゃないの?
じゃぁ、私が決めて上げるわ。」

 あら? 2人とも随分迷惑そうな顔をしているじゃないの。

「貴様の……。」

 セイクリッドとロドリグスが、2人揃って文句を言いそうになったから、私から先取りしちゃおう。

「良い事? 貴様には関係ないだの、貴様の世話にはならないだの言ってご覧なさい! 叩きのめして上げるわよ。
何なら、さっきより大きなクリスタル……貴方達にお見舞いしましょうか?」

 私はニッコリと極上の微笑み。
フフン、逆らえるものなら逆らってご覧なさい。2人ともすっっっごく悔しそうな顔をしていたけれど、構うものですか。
この美しい大地を破壊される事を考えたら、ずっとお安いものよ!

「そうねぇ……2人のマーナ(己の超常力)は、互角みたいね。うーん、いっその事それぞれのコブの数で決めるって言うのはどう?
ん〜とぉセイクリッドが9個でしょう? ロドリグスが8個。
数の少ない方が先って言う事で、ロドリグスがお兄様って事でどう?」

 うふふ♪ 我ながら名案だわ。

「ちょ……ちょっと待てっ!! この2個は、貴様がクリスタルをぶつけた後に出来たんだぞ。そんな事認められるかよっ!!」

 セイクリッドが猛反対する。
こいつー……私が決めてやった提案を無視しようと言うの?

「どう言おうと、ロドリグスが兄って決めたわ。それとも何? 貴方達より先に生まれた私の言うことが聞けないとでも言うの?」
「やっかましい! んなこと誰が認めるかっ!」
「……別に俺は構わないが…コブの数で決められたって言うのには引っかかるものがあるがな……。」
「冗談じゃねぇ!!」
「セイクリッド一人が反対しているだけね? じゃぁ2対1で決まりね。」

 私の言葉に、クスクスと笑う声が樹の上から聞こえてきた。
あら? 一体誰かしら?

「誰?」

 私の言葉に、その人物は素直に樹から飛び降りてきた。金髪の髪に薄い蒼の瞳の男の子。
あらまあ、この男の子もまた素敵じゃない?

「ずっと見せて貰っていたけれど、良い采配だね。お……っと、初めまして、俺はセロルナ・グラン・フェルドーム。
ロドリグスやセイクリッドと同じ(とき)にこの世界に生まれ立ったんだ。」

 セロルナはそう言うと、優雅にお辞儀をしてくれたの。フーン♪
ロドリグスやセイクリッドよりは、ずっと礼儀を知っているのね。

「私は、エリュクス……。」

 その後を続けようとしたら、セロルナはニッコリ微笑んだ。

「父上や母上から聞き及んでいますよ。これから宜しく。」

 あら♪ セロルナは合格ね♪ 私、とっても気に入りました♪
同じく生まれたはずなのに、この2人と来たら〜……。

「何だよ! その眼は! 随分非難がましく見ているじゃねぇか!」

 セイクリッドがぶっきらぼうに言うなりそっぽを向く。……ふーん、結構セイクリッドって可愛いかも知れないなぁ。

「……大地から初めに生まれたエリュクスと俺……それに海から初めに生まれたセイクリッド。
そして空から最初に生まれたセロルナ……か。これは、これからが面白くなりそうだな?」

 ロドリグスの不敵な言葉。う〜ん、確かにそうかも知れない。
3人とも一癖も二癖もありそうよね。面白い……と言うより、一抹の不安があるわ。
お父様やお母様も粋な計らいをして下さるんだもの。
ただ…この中で、私だけが女というのは、ちょっと抵抗があるなぁ。
まあ、でもそのうち私の話し相手も生まれてくるわね。
それまでは、とりあえず仲良くしなくちゃね。

 私は、3人に握手を求めたの。
最初、3人とも戸惑っていたけれど、すぐに手を差し出してくれたわ。こう言うところは結束が良いのね♪

「これから宜しくね。例え、どんな事があってもみんなで切り抜けましょうね。」

 3人は照れているのか、只頷くだけだった。
そうね、彼等とは本当に長いつきあいになりそうな予感がする。お父様やお母様が教えてくれた通りなら……。
でもこの3人と一緒なら、どんなに辛いことでも乗り越えて行けそう。

  聖霊達や、父カオス、母アース、そしてその同胞達が
  4人を祝福する。
  若々しい宇宙の中で、
  後に神に匹敵すると言われた創世の子供達の誕生であった。
  彼等はそれぞれに違った使命と宿命を負わされ、
  神々と同じ刻の長さを生きるよう定められた子供達である。
  その過酷な宿命は、終世に産まれる子供まで
  受け継がれることになる。
  ―――今はまだ、誰も知り得ぬ事ではあるのだが―――


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