Novel
Legend of origin 〜創世神話〜


第1部 誕生 <聖帝国ムー>

著者:真悠
776

 聖帝国ムーが出来上がり、何かお祝い事をしようとセロルナがナザリウスと共にラトゼラールに来てくれて考えていたんだけど、何も良い事が思いつかない。
ほとほと手をこまねいている時にも、セイクリッドは我関せずの顔をしてあらぬ方向を見ていたわ。ロドリグスやセロルナもセイクリッドに考えを聞いたんだけど…やっぱりセイクリッドって私達の話を聞いてないのよね。
逆に私達の考えは? って聞かれたんだけど、私達だって考えても出てこないから、聞いているんじゃない。まぁ、どうせ彼も全く考えていなかったみたいだし、良い案なんて出る訳ないとタカを括っていたの。

「……みんなで出来るような音、そして唄、それに併せた動きっていうのは……?」

 セイクリッドの提案に初めきょとんとしていた私達。だって…自然の音はあちこちにあるわ。それを私達が出す? 唄や併せた動き?
セイクリッドはそう言うと、ハッとなった後不機嫌そうな顔をしていた。まぁ誰もすぐに賛成しなかったせいもあるけれど、考えていたんだもの仕方ないじゃない。

 でもよくよく考えてみると、セイクリッドの案はすごく面白そうな提案だったって言う事に気が付いたの。そうよ……音が出るものを創り出せばいいんだわ。
セイクリッドの提案に、みんなが乗ってきた。セロルナやロドリグスも。
それなのに、セイクリッドってば相変わらず、面白くなさそうな顔をしているの。
何がそんなに気に入らないのかしら?

 セロルナがルシリス・シャーラトに帰る間際にセイクリッドにお礼を言っていた。素直に認められた事を喜べばいいのに、どうしてそれが出来ないのかしら?
ロドリグスやアステルや私達が、セイクリッドの提案を受け入れて、その後の話をしている真っ最中にフラリとどこかに居なくなったセイクリッド。

「あ、あれ? セイクリッドは?」
「え? ……居ません…ね。」

 ロドリグスとアステルの声にみんな首を傾げている。

「私が探してくるわ。お話を続けていてくれる? どうせ退屈で部屋にでも戻ったのよ。」
「悪いなエリュクス…あいつも居なければ話にならないって言うのは、判っているだろうに……。ここ最近セイクリッドの奴、なんか変なんだよな。」
「…そうですね、何かぼんやりしていると言うか、心ここにあらずと言うか…。」

 ロドリグスとアステルも心配していた。この数金星日、私も確かにセイクリッドの様子がおかしかったのは感じていたわ。
元気がないと言うか、いつもの覇気がないと言うか。本当にどうしたんだろう。そう言えば、ロドリグスのサポートになった頃から、時々遠くを見つめて溜息を()いていたわ。そんなにイヤなのかしら……。

「そうね、ついでに喝をいれてくるわ。じゃぁ行って来るわね。」

 私の言葉に一瞬不安そうな顔を見せたロドリグスとアステル。そんな2人を後にルーグ・ラトゼラールのセイクリッドの部屋に向かった。

 コンコン――

 ノックをして暫く待っていたけれど、セイクリッドの部屋の中からは何の返答もない。寝ているのかしら? そう思いながらもドアを開ける。

「セイクリッド、入るわよ。」

 セイクリッドの部屋のドアを開けた瞬間、海のイメージが流れ込んできた。蒼く澄んだ海の水。そして、それに反するかのように激しい波の音。
それは、この部屋にいるセイクリッドの性質なのだろうかと思うぐらい、雄大でいて激しいものだった。そのイメージは、一瞬で掻き消えた。

「セイクリッド……居ないの?」

 部屋の中をどれだけ見渡しても彼の姿はなかった。どこに行っちゃったんだろう。
溜息を吐いて辺りを見回してみた。思ったより…きちんと整理されているのね、セイクリッドの部屋って。ちょっとだけ見直しちゃった。
あ、いけないいけない。ぼんやり彼の部屋を眺めている時じゃないわ。
部屋よりもそこに居るはずの中身を探していたんじゃない。

 んー…部屋に居ないとなるとどこに行ったんだろう?
セイクリッドが行きそうな場所を考えてみた。ルーグ・ラトゼラールに居ないとなるとどこに居るのかしら?
どうせ、のほほんとどこかで楽しているはずだわ。そう、この際だから彼にしっかりと自覚してもらわなくちゃいけないわ。
聖帝国ムーのお祝い事をしようとしているのに、その提案だけしてさっさと居なくなるなんて余りにも無責任だわ。私だって、なんだかんだ言われながら頑張っているって言うのに。

 他の人にセイクリッドの行きそうな所を聞いても、みんな一様に首を傾げる。そう言えば…セイクリッドが暇な時に何をしているのか、どこに居るのかなんて私も知らないなぁ。何だってあんなにフラフラしているのかしら……。
その後もセイクリッドを探し回ったけれど、彼の居場所は誰も知らないし、見当たらなかった。

【何を探しているの? エリュクス。】

 ルーグ・ラトゼラールから出た私に不意に声をかける聖霊達。そうだ…彼等ならセイクリッドの居場所を知っているかもしれない。

「うん、セイクリッドを探しているの。貴方達どこかでセイクリッドを見なかった?」

【セイクリッド? 彼が居ないの?】
【うーん…彼の気は、我々も見つけにくいのだよ。】

 聖霊達も首を傾げていた。そんな中ミズナがニッコリと微笑む。

【セイクリッドなら、ほんの少し前に彼の生まれた場所に居ましたよ。移動した気配はないみたいだからそこを探してみてはどうですか?】
「セイクリッドの生まれた所って…サイラッシュ海岸辺り…よね? ……えっ!? どうしてそんな遠くに居る訳!? 彼が居なくなってそんなに時間が経っていないのよ。」

 私の言葉に聖霊達がクスクス笑っていた。

【エリュクスにも容易いだろう? 空間転移だよ。ただしセイクリッドの場合、自分のマーナで行ったようなものだけれど…。】
「マーナって…だって空間を越えるのは、アルセリオンの領域でしょう? それがどうしてセイクリッドが勝手に行けるの? ありえないと思うんだけど……。」

 私の言葉に答えようとせず、ただ微笑む聖霊達。その時の私は、彼等の微笑がどう言ったものを意味するのか良く判らなかった。

「……でもありがとうミズナ。行ってみるわ。」
【空間を越えるか、風に乗った方が早いよ。でなければ、セイクリッドとすれ違いになる可能性があるからね。】

 アルセリオンの忠告に頷く私、それと同時にアルセリオンが空間を開いてくれた。

「ありがとう、アルセリオン。」

 私は、アルセリオンが開いてくれた空間の中に入っていく。それは本当に一瞬だった。ルーグ・ラトゼラールから遠く離れたサイラッシュの海岸にたどり着いていたわ。


【……第一の変革が始まるな。】
【そうね。父である宇宙神と母である地母神、そしてお二方の数多(あまた)の同胞達の望みであり、望んでいない事でもあるわ……。】
【でも、何時までもあの子達は、今のままではいられないですよ。あの子達が変化と改革を求めているのだから…。】
【脆さゆえの強さ、強さゆえの脆さ。それをどう切り抜けていくか、それは今後のあの子達の進む道であろう。】
【我等聖霊は、その行く先を見守るのみ。あの子達がどのような道を選ぶ事になっても…。】

 聖霊達が苦笑しながらそう言っていた事をその刻の私は知らなかったわ。そう、その時は知らなくても良い事だったから。後に私が全てを知らなければならなかったのだけど、彼等はその時は敢えて私には知らせなかったのよ。
それは、聖霊達の心遣いでもあったの。


 サイラッシュの海岸辺りに一瞬でたどり着いた私は、セイクリッドの姿を探していた。真っ白な砂浜と打ち寄せる青と白の波。セイクリッドが生まれた場所。この海岸のすぐ傍には、ロドリグスが生まれた美しい山が、隣接している。
そして、この美しい海と山を囲み、いつでも虹を放っている空からセロルナが生まれた。
他のみんなは私が生まれた場所が、一番美しい場所と言っているけれど、ここだってとても美しい所よね。思わず溜息が出てきちゃう。

 …と、いけない。見惚れている暇はないんだったわ。私は、セイクリッドを探しに来たんだから。でもこの広い場所のどこに居るのかしら。
辺りを見回しながら、セイクリッドの姿を探すけれど、なかなか見つからない。
んもう! どこに居るのかしら。
ふと、前方に砂浜に寝転がっているらしい人影が見えた。居た、セイクリッドだわ。

 近寄ってみるとそれは確かにセイクリッドだったんだけど、ほんの一瞬セイクリッドの髪の色が見事な青銀色に見えたの。
え? どうしたんだろう、私の目疲れているのかしら。
ゴシゴシと目を擦って再びセイクリッドの姿を見つめた時には、もとの紺色の髪だった。
……変ね、なんだって彼の髪の色が変わって見えたのかしら? 大した事じゃないし、とにかく彼に声をかけなくちゃ。

「セイクリッド、こんな所にいたのね。」

 私の声かけに寝ているのか無視しているのか、なーんの返答もしないセイクリッド。良い度胸じゃない。……デラス・クリスタルでも叩きつけてやろうか?
そう思って真上からセイクリッドの顔を見下ろしていた私。
ピクリとも動かない、本当に寝ているんだわ。優しい風が私達に吹き付け舞い上がっていく。
ウェーブのかかったセイクリッドの紺色の髪が、柔らかく舞い上がる。
……こんなに探させて、自分だけはとんずらの上に昼寝してるの?
なんだか無性に腹が立ってきた。

「……ん……。」

 ピクリと身動きするセイクリッド。あら、気が付いたのかしら?
セイクリッドは、私には気が付かず大きな溜息を吐いた後、腕を頭で組んで再び寝ようとしていた。……ちょっと、それはないんじゃない?
せっかく私が、大変な思いをしながらここに来たって言うのに気が付きもしない訳?
ムカムカする気持ちを抑えられなくて、ついにセイクリッドの頭を思い切り蹴ってやったの。

「いてっ! 誰だ!?」

 何が痛いよ。どれだけ探し回ったと思っているの。ガバッと起き上がるセイクリッドを冷ややかに見下ろしている私。私の姿を見つけたセイクリッドは、まるで何でお前がここに居ると言いたげな顔をしていた。

「いてっ……じゃないわよ。こんな所でお昼寝? 随分悠長な事やってるじゃない。みんな貴方の提案した事に一生懸命になってるって言うのに、貴方だけとんずらするんだもの。眼が覚めてないって言うんなら、もう一発その頭を蹴ってあげましょうか?」

 私の言葉に寝ぼけたセイクリッドの頭も動き出したのか私に反論し始めた。

「……さっきの激痛は、お前が俺の頭を蹴ったせいか!? 何しやがるんだ。」

 あのねぇ、何をしているんだって言うのはこっちのセリフだわ。こんな所で一人のほほんと楽をして、何を考えているのよ!

「何しやがるんだじゃないでしょう。不本意ではあるけど、あちこち捜したのよ! セイクリッド貴方が提案した事なのに、途中で逃げるなんてとんでもないわよ。
私達みんなが、生きている聖帝国ムーのお祝い事なのよ。自分には、関係ないで済まさないで頂戴。戻るわよ。」

 私は怒りをこめてセイクリッドの右腕を思い切り引っ張り、彼の前を歩き始めた。

「自分で歩けるからそんなに引っ張るな、痛いだろうが!」

 反省しているかと思いきや、反論してくる訳? も〜ぉ…あったま来た!
思わずセイクリッドの方を振り返り、睨み付ける私に一瞬怯んだようなセイクリッド。大体こんな事しなくちゃならなくなったのは、誰の所為(せい)だと思っているの、誰の!

「こうでもしないと、貴方はどこかに行ってしまうでしょう!?」

 私の言葉に図星を指されたのか、何かを考えているのか判らないけれど、黙り込むセイクリッド。その後、白々しく大きな溜息を吐いてシレッと言い除けるセイクリッド。
その言葉もまた私の癇に障ったわ。

「あぁ、判ったよ。聖帝国ムーの皆で関わる事には、逃げ出したりしないって。それでいいか?」

 それで良いかって…だからなんて言い草なのよ!! 大体こいつには自分が統治者の一人だって言う自覚はないの?
もちろん、私の泣き落としで、しぶしぶ承知したって言うのは判るわよ。でもだからと言って、そんなに(おろそ)かにして良い事なの?

 セロルナやロドリグスだって、何とかしようと頑張っているんじゃない。それなのにどうしていつもセイクリッドは、その中に入ろうとしないの?
まるで、自分から壁を作っているみたいにみんなを拒否して、それってあんまりじゃない。

 そう思って言いたい事を言ってやろうとしたんだけど、うまく言葉が出てこないの。
いつも彼に言っている言葉しか思いつかなかったの。それなのに更にその言葉にへ理屈を()ねるセイクリッド。

「ルーグ・ラトゼラールひいては、この聖帝国ムーの統治者の一人でもあるのよ……か?
毎度毎度、同じ事を言うもんな。エリュクスは。けど、覚えてないだろうが、俺は統治者に付く気は、一切ないっていつも言ってるんだぜ? なのに何でいつも俺に、おんなじ事を言うんだろうな、お前は。」

 毎度同じ事を言って悪かったわね。セイクリッドが統治者に就きたがらないのは、百も千も承知の上だわ。でも、貴方だってその重要性を判ろうとしないんじゃない。
……そうよ、血に染まった姿をいとも容易く変えてしまった重大さに……。
その言葉を言ったセイクリッド自身も、さすがにまずいと思ったのか慌てて口を手で隠していた。そうね、いつもの私なら叩きのめすところだったけれど、その時は何故かそんな気にはならなかったのよ。

「……だって、貴方達は血に染まった未来をいとも容易く回避したもの…。セロルナ一人だけでも、ロドリグスとセロルナの2人だけでも、何かが欠けちゃうのよ。貴方も含めて3人…必要なのよ。」

 そう言った想いを込めて言葉にしてしまったけれど、セイクリッドは笑ったり茶化したりしない。そう言った所が不思議なのよね。
普段のセイクリッドからは想像つかないのよ。見ていないようで居てきちんと他の人の本質を見ていて、聞いていないようで居てしっかりと聞いている。物言いは相変わらずぶっきらぼうだけれどね。

 どう答えていいものかと困った顔をしながら、いきなり無造作に頭をガリガリと掻いた後、不意にセイクリッドが言葉にした。

「……行くぞ。みんな待ってるんだろう?」

 思わず顔を見上げて、セイクリッドの顔を見つめていた。なんだか、今までのセイクリッドとちょっと違う?
まるで……彼が探していた何かが見つかったかのような吹っ切れた表情をしている。
この短い時間で、セイクリッドは何を見つけたんだろう。
何より嬉しかったのは、照れたようにセイクリッドが、私に手を差し伸べてきた事。嬉しくてちょっぴり逞しく見えて、私も思わず笑顔になっていた。

 今までどこを見つめているのか判らなかったセイクリッドの表情が、何かをつかんだかのようにさっぱりしている。そういう顔の方が、セイクリッドには似合うかもしれない。
ほんの少し、セイクリッドのその顔に心臓が、早くなった事は……絶対セイクリッドには言わないでおきましょう。
だって…なんかセイクリッドを良い気分にさせそうなんだもの。

 時々後ろを振り返り、ゆったりと歩くセイクリッドを急かす私。私の急かす言葉に返事をしながら歩いてくるセイクリッド。
こんな事もたまには悪くないかな?


 私とセイクリッドがルーグ・ラトゼラールに戻ってきた刻、ルシリス・シャーラトに帰ったはずのナザリウスがいたの。
アステルと共に、ああでもない、こうでもないと一生懸命話していたわ。
一体どうしたのかしら? そう思っていた矢先、セイクリッドも同じ疑問を持っていたみたいで、ナザリウスとアステルに聞いていたの。

「ナザリウス? セロルナと帰ったはずじゃないのか。どうしたんだ? 一体。」

 セイクリッドの言葉にナザリウスとアステルが顔を上げるけれど、すぐにまた2人だけで話をしている。セイクリッドやロドリグスじゃないから、悪巧みと言うのは考えられないけれど何をそんなに夢中で話し合っているのかしら?

 セイクリッドは、自分を無視している2人の傍によっていく。ちょ、ちょっとこの2人に乱暴する気なの?
でもセイクリッドは、私の予想に反して2人の会話を聞いていただけだったわ。

「お帰り、エリュクス。セイクリッドも連れ戻してくれたんだな。」

 不意にロドリグスの言葉が聞こえ、私はロドリグスの方を振り返った。

「ただいま……ねぇロドリグス? ナザリウスは何故戻ってきたの? なんだかアステルと真剣に話し合っているみたいだけれど……。」
「ああ、何でもルシリス・シャーラト側とルーグ・ラトゼラール側に時間の狂いがあっては困ると、相談に戻ってきたみたいだよ。」
「時間の…狂いって、何が?」

 私の問いかけにロドリグスも肩を竦めていた。

「詳しい事は、2人とも話してくれないからね。言える事は、ナザリウスの案にアステルもかなり乗り気だって言う事かな。出来上がってからのお楽しみなんじゃないか?」

 ナザリウスとアステルの傍で話を聞いていたセイクリッドが戻ってきた。

「フラフラとどこに行ってたんだ? セイクリッド。提案した事なら最後まで責任持てよ。」
「やかましい、それぐらい対処出来ないようで、統治者と言えるのかよ。……ナザリウスとアステル…あの2人面白い事考えてるのな。思わず感心しちまった。」
「え? セイクリッドには2人が何を話しているのか判ったの?」

 私の質問にセイクリッドが頷いていた。

「……と言ってもあの2人から直接聞いた訳じゃないが、星の運行を話し合っているみたいだぜ。それが何に関係するのか…までは判らないがな。」

 セイクリッドの言葉に私とロドリグスは思わず首を傾げていたの。星の運行がどんな風に2人の話し合いに関わってくるのかしら?
星の運行かぁ。もしかすると星の光から生まれたマグノリアなら何か知っているかもしれないわね。教えてあげようかな、ナザリウスとアステルに。
でも、話し合いが落ち着いたら、2人もそれに気が付くかもしれないなぁ。

「さて、俺達は音を出すものを作り出さなきゃいけないんだぞ。手伝え、セイクリッド。」
「何で俺が?」
「元々は、お前のイメージだろう。どんなものが近いのか俺達に伝える義務はあるぞ。」
「……だから、適当に言っただけだって言っただろうが。俺はそれよりしたい事が……。」
「セイクリッド? さっき言ってたでしょう。聖帝国ムーに関わる事で逃げ出したりしないって。その舌の根も乾かないうちから、逃げ出そうって言う訳?」

 ロドリグスとセイクリッドの話し合いに突っ込みを入れた私に、頭を抱えながら深い溜息を吐くセイクリッド。

「ちくしょう…判ったよ。行きゃ良いんだろ、行きゃ。」
「最初から、素直にそう言えばよかったんだ。ほら、みんなが待ってる。さっさと来い。」

 ロドリグスに促されて、渋々その後をついていくセイクリッド。私は2人を見送った。
さて、音が出るものが出来るまでに、私が出来る事と言えば踊りや唄を考える事だわ。セイクリッドがその提案をした時に、実は踊りらしいものが私の頭の中に浮かんでいたの。
他の人ももしかしたら何か思い浮かんだ人も居るかもしれない。
まずは、それを探さなくちゃね。
……そう言えば、さっきセイクリッドが気になる事言っていたわね。『それよりしたい事』って言っていたけれど、何をしようとしているのかしら?

 その時は知らなかったの。セイクリッドが何を目指そうとしていたのか。そして、セイクリッドの想いが、表に出た時は、聖帝国ムーを創ると言ったセロルナの意見より、もっと大事になるなんて。


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